中国ビジネスを通じた日中友好
賄賂(わいろ)
「賄賂」 それは中国でビジネスをする以上、避けて通れない道である。
そして、その賄賂の対中国人だけのものではない。中国でビジネスを展開している日系企業の日本人にも賄賂は必要なのである。
上海市の最大手メディア企業の広告部に勤務にする中国人の友人がこう言った。「中国に駐在している日本人は、中国語は覚えないけど、中国の悪い慣習だけはしっかりと覚える。」
日本人が多く住むエリアにあるそば屋のテーブルに座った僕らの周りでは、客全員が、40歳から50歳前後の日本人男性で、向かいのテーブルでは4人のおじさんたちが、夕食の後どこのカラオケに行こうかと、楽しそうに話していた。
大手日系電機企業現地法人総経理
ある日彼女は、某大手日系電機企業との商談のため、上司と同僚の3人で北京に飛んだ。
広告部で唯一日本語を操る彼女は、自分のクライアントでなくても、日系クライアントの商談に同行することがある。先方の日系企業担当者は、上海から来た彼女が日本語を理解出来るとは知らないため、日本語で色々話しているらしい。その内容のレベルが非常に低く、彼女は辟易していた。
「今日のディナーはどっち持ちなんですか?」
「そんなの、向こうに決まってるだろ。」
「あっ、そうですか。じゃあ高いもの頼もうっと。」
大手日系電機企業の出席者は、中国現地法人総経理とその部下2名の計3名。総経理とは社長であり、中国で最も高いポジションにいる人である。
「広告とかめんどくさいんよなぁ。Goサインを出すのはどうせ日本本社だし、稟議とかめんどくさい割には、全然おれのところに金入らないし。」
これは総経理から聞かれた言葉である。会食が終わったあと、友人はこの発言を上司に報告した。そして、翌日の会議で総経理に対し、こう切り出した。
「御社が広告を掲載して下さるなら、お互いが”Win-Win”になれるよう我々は努力します。」
「ふーん。」
「50万元ならば、3%。100万元以上であれば、10%ではいかがでしょうか。」
「まずは提案書見せて。」
会話は全て中国語で交わされた。こういう中国語だけは理解出来るのよね、と嫌そうな顔で彼女は僕に言った。
MONTBLANCとBVLGARI
上海に帰った後、同僚の担当者は総経理にMONTBLANC、総経理の奥さんにはBVLGARIの財布をプレゼントした。
その後、総経理から日本本社の広告担当者の連絡先が送られてきたという。 結局、その大手日系電機企業が出した昨年の広告は30万元であり、約束の3%は支払われなかった。
日本人は、中国人よりも多くの賄賂を要求する。彼女の会社の日系企業担当者間ではよく言われるらしい。
日本に行ったことがない人がまだ圧倒的多数を占める中国。日本人の印象は彼らが中国で会ったり、話して来た日本人によって形成される。
この大手日系電機企業のようなカネに汚い日本人が少数派であることを、日中関係がより良い方向に向かうことを希望する僕は祈る。